いよいよ高市さんの怒涛の追い上げが具体的な数字にも現れてきた。(自民党総裁選)

一週間前ぐらいまで私(経営コンサルタント兼経済思想家 倉本圭造)は、自民党総裁選は「河野vs岸田」で決まりだろうと頭から決めてかかっていて、 連載を持っているウェブメディアでもそういう記事を準備していたのですが、全然期待せずに見た9月7日の高市氏の出馬会見に物凄く衝撃を受けて、

「これは女性総理誕生は十分にありえるな」

と思い、にわかに「高市推し」の記事をいくつか書いてきました。

そのどれもが、このブロゴスにおいて非常に広く読まれており↓、ネット環境における注目度は非常に高いことがわかります。(未読でしたらぜひ以下の記事もどうぞ)

1本目

(女性初)高市早苗総理誕生が十分ありえると考えられる3つの「スゴイ能力

2本目

高市早苗氏は「極右のアイドル」にすぎないと思っていたが、出ている右翼系動画をいくつか見たら考えが変わった話。

3本目

「アメリカ型ビジネスエリート」が強引にすべてをリードする時代の終焉が、高市氏待望の空気に繋がっている

「出馬会見」までの高市氏は「極右」イメージが染み付いていて、私もそういうヤバい人だと思っていたんですが、実際に会見を見ると非常にオープンに違う立場の人とも対話するスキルのある人で、一部のフェミニストや左翼アカウントまで

「こいつは敵だがコミュニケーションスキルは認めざるを得ない。端的に言って舐めてかかるとヤバい」

みたいな事を言っているツイートが多くシェアされていたのが印象的でした。

とはいえ、これらの記事を書き始めた一週間前には、「高市を推すなんて頭オカシイヤツ」「絶対にありえない候補を推す状況が見えていないアホ」みたいな扱いをされることが多かったです。

また、私は経営コンサル業のかたわら『文通』をしながら個人の人生について考える仕事もしていて(興味ある人はこちら)、そのクライアントにいる「保守系ユーチューブチャンネルの、元・熱心な視聴者(一部のチャンネルのコロナ禍に対する非理性的な配信方針で熱が急に冷めたそうです)の女性」にすら、

ええー!あのチャンネルに出てくる人たちの仲間ですよ?それを推したりしていいんですか?

…みたいな散々な言われようでした。(保守系チャンネルの関係者の皆さんスイマセン。科学的にヤバいチャンネルばかりじゃないことは今は知っています)

しかし!ですよ。

会見からさらに一週間たってみて、古風な言い方ですが「燎原の火のような」高市支持の広がりはかなり「具体的な数字」的なものにも現れつつあるので、それを紹介しながら、この「高市現象」はどこまで行くのか、その背後にある潮流は単なる「極右ムーブメント」としてくくってしまって良いものなのか?について考察する記事になります。

1●「高市陣営決起集会」に集まった議員の数に永田町が騒然としているらしい

「9月6日から9月9日の間に行われたヤフーアンケート」では高市氏がダントツ1位の支持を得るなど、もともと高市氏は「ネットの保守層」のなかでは圧倒的な支持があったわけですが、そんなの「ネットで声が大きい少数の人達だけの話」だろうと真剣に受け止められていなかったところがあります。実際「世の中全体」を相手にした調査では高市氏は知名度で河野氏らに大きな差をつけられている事が多かった。

しかし、13日報道の日テレの調査によれば、実際に投票を行う層と思われる「自民党員・党友」調査において、河野氏25%、石破氏21%、岸田氏19%に続く、高市氏は16%にまで迫っており、石破氏は不出馬なのを考えると押しも押されぬ「三番手候補」になっています。

そして、14日に行われた高市陣営の「決起集会」については、テレビ東京の報道番組で「高市氏の勢いに永田町騒然」と題して以下のように驚きを持って報道されています。

上記動画より以下引用↓(傍線筆者)

(前略)岸田さんや河野さんを軸とした争いになるのではないかと見られていました。

しかしここ数日、永田町ではちょっと違った見方が出ているんですね。

というのは今週火曜日に開かれました、高市前総務大臣の選挙対策会合(自らの陣営の会合)ではですね、議員本人の出席が39人、代理出席が28人と、代理出席も含めれば、なんと70人近い国会議員が集まったということなんです。

これには河野陣営や岸田陣営からも驚きの声があがっています。予想以上の議員が集まったなということなんです。

「この時期に高市氏の会合に出席する」というのは、実名で高市氏の支持を公言する…ようなものなんですね。軽い気持ちで参加するようなものではないんです。

ですから今永田町では、勝敗が見えない時点で、高市氏を支持する人が、この時点で70人もいるのは大変驚きだと、高市氏に勢いが出ている…という受け止めが広がりつつあるんですね。

この高市氏の会合には、高市氏の政策や主張とは距離があると見られていた二階派からも、代理出席を含めて7人が出席していました。 

高市氏は周辺に、今は選挙が近いので、議員が地元に戻っていて東京に誰もいない事務所も結構ある、にも関わらずこれだけの人数が自分の会合に来てくれたことは大変ありがたいと、こう話していて、この結果に手応えを感じているようでした。

その後このニュース動画では、河野氏陣営の決起集会の様子も伝えられているのですが、河野氏陣営の集会に集まったのは、

28人の議員と29人の代理出席者の合計57人しかいなかった

そうで、単純に「決起集会」の参加者の人数からして、既に高市氏が河野氏を10人も抜き去っている事がわかります。

もちろん、この一点がどれほどの事を意味しているのかは考察の余地があります。

単純に河野氏の陣営は優位だからわざわざ「出席」する必要はないだろうと思っている議員が多いのかもしれないし、今の自民党の雰囲気的に「河野氏支持」を明言することは、ある種の派閥の力学的に勇気のいることだから、様子見をしている人が多いのかもしれない。あるいは河野氏の人気は議員層では実際に少なく、党員票への期待だけで勝つ戦略ということなのかもしれない。

しかし、上記の番組でも言及されているように「この時期に決起集会に出る」というのは、「旗幟鮮明」に自分の立場を表明するということであり、軽い気持ちで適当にやるようなことではないという点は考える必要があります。

少なくとも高市氏は、「全然箸にも棒にもかからない泡沫候補」のような印象だった一週間〜二週間前とは全然違う、かなり「上位二者に迫ってきている」ポジションであることがわかるでしょう。

2●高市支持層は既に「極右」層の外側にかなり広がっている

また、もっと面白い高度な分析からも迫ってみましょう。

東京大学大学院工学系研究科教授の計算社会学者の鳥海不二夫氏が、最近よくあるツイートの連関を可視化して分析する手法を用いて、アメリカのトランプ元大統領の支持者のアカウントと、高市氏の支持者のアカウントがどれほど重なっているのか…について分析を行っています。

高市氏を支持するツイートをRTしたアカウントはトランプ元大統領を支持していたのか

(上記記事↑より引用)

高市派の42%が議会占拠事件時のトランプ派だったことが分かりました.

逆に,トランプ派の30%が高市派でした.さらに,その中から「アメリカ大統領選挙は不正選挙だった」とするツイートをリツイートしたアカウントに限定すると,それらのアカウントの56.6%が高市派であり,高市派の18%が不正選挙ツイートをリツイートしていたことが分かりました.

…なかなか興味深い記事だったので詳細はリンク先に譲りますが、この記事のSNSでの受け止めは、

・やっぱり、高市支持者にはトランプ支持者が多いんだね

…という感じの受けとられ方が多かったのですが、しかし私はこのデータを見てむしろ注目するべきだと思ったのはむしろ、

「案外、高市支持者の中でトランプ派(特に不正選挙説を信じるようないわゆる”Jアノン”)は少ないんだな」

ということです。もっと大きな数字が出る偏見があった。

というのも、ちょっと言葉を悪く率直な言い方をしますが、この「設問」をした人の視点からすれば、

「高市を支持するようなヤツは、アメリカ大統領選の不正選挙説を信じるような頭のオカシイヤツらなんだろう」

という仮説に則って分析している面は否定しきれないと思います。

しかしこの分析結果によれば、

「高市支持者」の中に、単純な意味での「トランプ支持者」ですら4割程度しかおらず、中でも「Jアノン層」に関しては18%程度しかいない

わけです。

つまり残りの「6割」とか、「82%」という高市支持者グループは、「トランプ支持(ましてやJアノン)」ではない「普通の日本人」である事がわかります。

さらに言えばこの分析は「9月1日からのツイート」を対象としており、対象期限の終わりは明記されていませんが、13日の朝の投稿であることを考えると12日や11日ぐらいまでのツイートで構成されていると思われます。(結構人力で数え上げるような作業も含まれていそうな分析手法なので、10日ぐらいまでかもしれません)

高市氏のターニングポイントとなった「出馬会見」は8日のしかも夜で、その後「高市氏は全然”極右層限定のアイドル”という感じではないぞ!」という評価は徐々に広がってきていますから、

この分析期間「以降」にこそ、「高市支持の”非右翼コア層”への浸透」はさらに進んでいると予想できる

わけですね。

実際、私が高市氏の会見動画を見て衝撃を受け、「推す」記事を初めて出したのは9月9日の事であり、それ以降私の記事としては非常に多く読まれ、「高市氏への偏見を持っていたが考えが変わった」という声も沢山私のツイッターアカウントに寄せられています。

記事の感想などお気軽に私のツイッターに話しかけていただければと思っていますが(ついでに記事の更新情報などのためフォローいただければと!)、なかでもこの「かれーぱん」氏のご意見↓には「偏見を持っていてすいませんでした」という気持ちになりました。

つまり全体として何が言いたいかというと、

確かに初期の高市支持者には「トランプ支持者(特にアメリカ大統領選挙不正説を信じるJアノン)」などの「コアな右翼層」が多かった面はあるが、既にそういう層は高市支持者の中で「少数派」になりつつあるほどに、「一般層への高市支持の浸透」が進んでいる

ということが見えてくるんですね。

では、この「極右候補」高市氏の「一般層への浸透」について、どういう風に考えればいいのでしょうか?

3●「高市現象」の背後にある「人類社会の大きな転換」とは?

ここで簡単にですが、「極右候補」と断罪されていた高市氏の躍進の背後にあるものについて、「深い背景分析」みたいな話を聞いてほしいと思っています。(少し難しげな話もするので、興味ない人は小見出し4まで飛ばしてもらっても構いません)

単純化して言えば、アメリカのアフガン撤退などの情勢変化があり、

20世紀の冷戦終結後ずっと続いてきた、『唯一絶対のアメリカのやり方』に世界中の国が一挙手一投足まで合わさせられる時代の終焉

…みたいな現象が進行し、米中冷戦の時代になり人類社会全体における欧米のシェアが下がり続ける時代にあって、

単に欧米的理想を絶対的なものとして非欧米社会に「押し付ける」のではなく、「対等な文明」としての尊重心を持った上で欧米的理想を溶け合わせていくモードが必要とされはじめている

という大きな転換があるのだと私は考えています。

最近なんどもリンクしていますが、先日「バイデン大統領のアフガン撤退演説を”関西弁で”訳す」という企画↓(以下ツイートからツリー形式で読めます。ツイッターが読みづらい方はこちらからブログ形式でどうぞ)

この演説↑でもわかるとおり、もうアメリカは「唯一絶対の欧米的理想」を人類社会の隅々までゴリ押しすることは諦めつつあり、むしろ

「欧米的理想」と「ローカル社会の意地」を対等なものとして尊重しあえる形勢を作り出すことが、今の人類社会の最大の課題になってきている

ことがわかります。

その中で、欧米と対置されるローカル社会における知識人階層の責任としては、20世紀の「欧米的理想を右から左に持ってきて押し付ける」型の「啓蒙する知識人」ではなく、むしろ「ローカル文明側の根底的な意地の部分」をいかに汲み取り、欧米的文脈でも理解できる形に転換した上で両者の調和を図っていく「レペゼン(代表)する知識人」こそが求められているのだと私は考えています。

たとえば歴史認識問題にしても、「19世紀の白人帝国の暴走に対する決死の非白人による抵抗」という、いわゆる「意識高い系」の「ポストコロニアリズムの論理」的に見ても否定できない要素の部分も半分は含まれているはずの大日本帝国を、一緒くたにナチス的な存在とする断罪を無理やり押し付けようとするから永遠にコジレ続けるわけですよ。

欧米のシェアが下がり続ける21世紀の人類社会において、より「多面的で総合的な」見方をして「功も罪も」適切に描けるようになりさえすれば、そこから「米中冷戦の時代」の「本当の平和への責任」の道も見えてきます。

「高市総理」の誕生は、「欧米文明の視点からソレ以外の文明を一方的に断罪する20世紀型リベラルのあり方」の歪みを超えるために、「非欧米国側の立場」からの視座にまずは「声」を与えることで、本当の双方向的な対話が可能となる第一歩となると私は期待しています。

神様視点で誰かを「断罪しまくる」ことで自分だけは「イノセントな存在」でありえると夢想するという20世紀人類最大の悪癖を超える、「平和への本当の責任」を果たす道がそこにはあると私は考えているので、この話については以下の記事↓を読んでいただければと思います。

アメリカのアフガン撤退以降の世界的情勢だからこそ可能な「歴史認識問題」のあるべき解決策を考える。

20世紀型の「誰かに罪をおしつける」型の断罪によってリベラル派の正義ごっこの為の生贄にされ続けてきた日本人の思いが、今後の世界における大事な「平和への礎」になる未来があるはずです。

(ちょっと難しげな話)はここで終わりです。聞いてくださってありがとうございました。

4●「女性総理」という「絵面」だけで「世論調査上の河野氏の人気」などは吹き飛ぶかもしれない。

では最後に、もっと「単純な視点」から、高市氏支持の「より一般的な層への浸透」について考えてみましょう。

ここ数回のブロゴスの記事で書いてきたように、高市さんの意外に「オープンに開かれた対話スキル」みたいなものが、「安倍・スガ」時代によくあった「わかるやつだけわかればいい」的な政治スタイルに不満を持っていた層の「対話への飢え」にフィットしているの可能性は侮れないと思っています。

私の妻は普段あまり政治に興味がない人ですが、私の記事を読んで最初は「えー高市さんってイメージ悪いなあ」とか言っていたにも関わらず、一応興味を持って三氏の会見をパラパラとYou Tubeで見たところ、

確かに高市さんの会見は圧倒的に面白くて、唯一最後まで飛ばさず見れた。他の二人は地味っていうか、会見全部見てられなくて飛ばし飛ばし頑張って見たって感じ。

と言っていました。

そもそも、「河野氏が人気」と言っても、”全国民レベル”から見るとかなり「政治に興味がある層」限定の話である可能性は高いです。

よくある「誰が総理にふさわしいと思いますか?」的な世論調査で河野氏・石破氏・岸田氏…という順番になるのは、単に「調査票に記載された名前の中でその人しか知らない」という程度の現象を意味している可能性もある。

「政治について詳しい」層からすれば河野氏を支持するにしろ反発するにしろわかりやすいですが、「河野・岸田・高市と言われても誰も深くは知らない」みたいな層からすれば、

日本初の女性総理誕生なるか?

という「単純な絵面」の圧倒的なわかりやすさのパワーは、侮れないものがあると思います。

そのあたり、「一番人気なのは河野氏」という「先見」を持ってしまっている人は、もう一度冷静に「テレビ画面に映って3分ぐらい対話している様子」のパワーについて冷静に考え直してみると、また違った印象が見えてくるかもしれません。

特にこの記事で書いたように、私自身を含めてなんですが「政治は人気取りじゃなく実行力こそが大事」的な価値観の「ビジネス右派」的な人からすれば「頼りがいがある改革派の振る舞い」に見えるような、食い下がる記者の質問をピシャリと無視したりするような河野氏の対話スタイルを、想像以上に『感じ悪い』と感じる層が日本には結構いる事も無視できません。

一方で高市氏は、ほんの一週間〜二週間前には「真面目に受け取るのがバカバカしい泡沫候補」扱いだったのが、今や決起集会に70人弱を集める堂々とした「3位候補」にのし上がってきたわけです。

そしてもちろん、まだ現時点では「3位」候補にすぎませんが、実際の投票までまだ”さらに二週間弱”あります。

さらに「次の風」を捉えることができれば、今回の選挙は派閥の論理を振り切ってでもみんな「勝ち馬に乗りたい」と必死だとされていますから、雪崩を打って今までとは違う世界が見えてくるかも?

日本国 第百代内閣総理大臣 高市早苗

を、私は見たいと思っています!

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倉本圭造
経済思想家・経営コンサルタント
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