村上春樹新刊「騎士団長殺し」を読もうか迷ってる人へのガイド
村上春樹氏の新刊「騎士団長殺し」が発売されてから一ヶ月超がたちました。あなたはもう読みましたか? 私は読みました。なかなか・・・私は結構好きでした。ただ、読もうかどうか迷ってる人も多いかと思うので、「そもそも村上春樹作品とは何なのか?」から、「今回の作品と過去作品を比較するとどうか?」といったことまで、ガイドとしての文章を書いてみたいと思っています。 結論を二行にまとめると、 村上春樹作品とは、過去からの文化的惰性が通用しなくなった社会において、新しい自明性を獲得しようとあがく試み であり、 『騎士団長殺し』の過去作品との違いは、主人公が「完璧な防御壁」の内側から断罪する位置を捨て、「昔からの友人の男」や、そして「女性というもの」に大きく一歩歩み寄った作品 ということになろうかと思います。 目次は以下の通り。 1村上春樹作品とは何なのか? ・・・または(村上春樹読者の三類型について) 2「騎士団長殺し」と過去作品との違いはどういうところにあるか? ・・・または(デタッチメント→コミットメント→次はインテグレーション?) 3村上春樹氏の変化と、現在の世界の変化との対応関係は? てな感じです。 では。その1からどうぞ。 ・ ・ 1村上春樹作品とは何なのか? 村上春樹作品の読者は三類型いると私は考えています。 A 自他共に認めるハルキスト B ハルキストとか呼ばれるとちょっと困るが、春樹作品の”良さ”は一応理解できる層 C なんか話題だから読んでみたという層 勿論どんな作家にもこういう同心円状に広がる読者群がいるとは思いますが、村上春樹作品は他の作家に比べてこの「BグループとCグループの格差」がかなり激しい作家であると思います。私は何人もの、しかも結構本を読むこと自体は好きな層の人から、「あんな荒唐無稽で唐突にエロがはさまってるだけの話のどこがいいの?」と聞かれて、説明しようがないので「うーん、まあ、ねえ、ハハハ」と返答に窮したことがあります。 そういう人がちょっと読んでみた上で公言する村上春樹作品の売れてる理由とは、「うだつのあがらない男が次々と良い女に言い寄られて良い思いをするところがウケてるだけなんだろう」的な感じになっていて、まあそれを影の目的に読んでいる長年の読者がいないとは言いませ