(女性初)高市早苗総理誕生が十分ありえると考えられる3つの「スゴイ能力」
連日色々などんでん返しが報道されて注目を集める自民党総裁選ですが、高市早苗候補についてあなたはどう思いますか?
正直言ってつい最近までは、「コアな保守派」層以外の期待度は決して高いとは言えず、「”過激な最右翼層”の人たち限定のアイドル的存在」だと思っている人も多かったと思います。
私もそう思っていたのですが、昨日高市氏の出馬会見を見て、かなり考えが変わりました。これは「風」を捉えて日本初の女性首相誕生もありえるのではないか?と感じさせるだけの迫力と知性とコミュニケーション能力がある印象を受けた。
その動画がコレ↓なんですが・・・
全体として
A・政策理解の解像度が非常に高く、具体的で柔軟な議論ができそう
B・国民目線の「気持ちの共有」と「ブレない統治者目線」を両立できるバランス感覚
C・揺るぎない”保守”の価値観を現代的にリベラルな文脈に読み替えて話すスキルが超凄い
・・・といった「驚き」がありました。
いや「驚き」というと失礼なのかもしれませんが、とにかく「こういう人だろう」と思っていた印象と全然違う、「驚き」としか言いようがない感じで、単純にベタな言葉で言うと
”凄い有能そう”
な立ち居振る舞いであることにビックリしてしまったというか。
現時点ではあまり「有力候補」とは見られていませんが、「最右翼層」からの揺るぎない支持に加えて、安倍氏などの重鎮の後押しが得られた事もあって、もし今後とりあえず「リングに上がる」ところまで来れた情勢になりさえすれば、
「岸田vs河野vs高市」
の純粋な「個人」同士の争いになれば、そこ以降「大化け」して高市総理の可能性は十分ありえると私は感じました。
今回の記事では、高市氏の会見を見てビックリした(と言ったら失礼ですけど本当にビックリしたんですよ)3つの点を上げながら、日本初の女性総理の可能性について考えてみる記事です。
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●1「空虚なキャッチフレーズだけしかない政治家」じゃない具体的な細部の政策理解の解像度が高そう
まずこの記事冒頭に述べた「3つの長所」の1つ目なんですが、
A・政策理解の解像度が非常に高く、具体的で柔軟な議論ができそう
日本における「女性政治家」といえば、小池百合子氏や蓮舫氏など、「細かい議論よりもキャッチフレーズを連呼しまくって流れを作る役割」の人が多い印象があります。
小池百合子氏の「7つのゼロ公約」のように、現実性の検証ナシに勢いでそれっぽいことを言って見せて実際には全然実行の道筋すら立たずに終わる…みたいな悪いイメージが「日本の女性政治家」には染み付いてしまっているところがある。
しかし、高市氏の会見を2時間聞くと、あらゆる(少なくともそこで扱われている)政策課題の細部についてすごく解像度の高い理解を持っていることがわかります。
例えば子育て支援についても、
・ベビーシッター・家政士費用の国家資格化した上での税控除対象化について述べながら、「国家資格化」にかかる手続き的問題がどの程度の難しさなのかについて現実的な推量がある様子がわかる言い方をしていたり…
・高等教育実質無償化についての議論をしながら、現時点で第一子の場合、第二子の場合、第三子の場合でこういう制度になっているが、自分としては第二子の場合はこの程度、第三子の場合はいっそ完全に無償・・・というレベルを目指したい・・・という「細部の議論」を「全体の構造」から離れずにサラリと議論できたり…
「キャッチフレーズ」をテキトーにぶちまけてウケればいいや、という感じじゃなくて、現状の制度がどうなっていて、そこでどの程度の変更なら政治的に可能か、そこを自分なら後ひと押しこういう事に挑戦したい…という議論が縦横無尽にできる。
しかもこういう細部の話をしているようで、「大枠の議論の幹」から全然離れずにできるという、「普通の仕事できる人」感が物凄い「日本の女性政治家」のイメージと違うというか、その点でビックリしてしまうところがありました。
なにより、記者とのやり取りが『双方向感』が凄いあって、適切な意見であれば当然取り入れますよというテイストなのが、自民党政治家としては物凄いレベルのコミュニケーションスキルだと思います。ほんと何度も言って失礼ですけど「びっくり」してしまった。
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2●たまに出てくる関西のオバチャンキャラと揺らがない統治者としての判断力の両立
「3つの長所」のうちの2つ目はこれです。
B・国民目線の「気持ちの共有」と「ブレない統治者目線」を両立できるバランス感覚
「一言お願いします! 聞こえてるんでしょ? 一言!」
…とヤジり続けて、意地悪く言えばよくある「終会直前に吹き上がって見せて、それを案の定強引に無視した自民党政治家の横暴は許せない!」という絵にしたかったのかもしれませんが、そういう問題に関しても、全然余裕ですよというテイで時間をわざわざ延長して以下のように答えていて…
「森友の問題に関しましては、ひとりの公務員の方が、大変精神的にも体力的にも追い詰められ、そして、役所の正義を疑い、悩み、命を絶たれたという、本当に気の毒な事件でございました。まずは、ご遺族の方々のお悲しみに...本当に耐えがたい、お悲しみだと思います。お悔やみ申し上げます。私がやりたいのは、今後、こういう改ざん、文書の改ざんが絶対に起こらない、どこの役所でも起こらない、官邸の中でも起こらない、そういう体制をしっかりと作っていくということでございます。すでに行政機関で調査された上、今、お答えしにくいのは、民事の裁判になっていると聞いているので、裁判中の案件については、お答えは差し控えさせていただきますが、ただ、再発防止にはしっかりと取り組んでまいります」
後半の「ピシャリ」とやる部分で政策担当者としての優先順位をブラさない部分は「普通の自民党政治家」なんですが、「前半部分」で、「本当に気の毒な事件でございました」的な部分で”本当に気の毒そう”な気持ちを出すところがフツーの自民党政治家とは段違いな部分だと思います。
「女性政治家として総裁選に出る事をどう思うか」という質問に関しても、以下のような感じで…
「”女が国会行って何できるねん!”とか”小娘が国会行って何できるねん”とか、30過ぎて小娘と呼ばれたのはちょっと悪い気はせんかったんですけど、若い事と女性である事がハンデやった時代がございました。ところが最近は、候補者がいなくて各都道府県連が公募をするとなった時に、若い人、女性いませんか?としきりに言われるようになった。諸先輩がたの女性議員のかたがたが懸命に歯を食いしばって活躍してくださったおかげだと思います。確実に時代は変わっていきますので、これからは公募で選ぶ基準も変わってくる」
この「一瞬だけ関西弁のオバチャンキャラが憑依して”気持ち”を繋いだ上で、サッと我に帰って統治者としてブレさせてはいけない一線をピシャリと通していくスキル」が超スゴイなと思いました。(高齢男性の古い自民党政治家は前半があまりにも無さすぎるんですよね)
正直今以上に関西弁キャラを使うのは全国的には良くないと思うんですが、関西弁を使っていない部分でも共通して貫かれている、この「気持はわかるでぇ」部分をちゃんと入れた上で、その「気持はわかるでぇ」に流されて社会運営の軸がブレたりはしないピシャリと立て直すバランス感覚が物凄い高度なコミュニケーション力だと感じました。
先日バイデン大統領の演説を”関西弁”に訳して見ると日本の首相とは段違いの「言い訳力」があるよ・・・という試みをツイッターで発表したら非常に好評だったのでご興味があれば読んでほしいのですが(→コチラから)、アメリカ大統領の演説でもこの「気持ちに寄り添う」部分と「それでもコレが必要なのだ」と説得する部分との切り替えが物凄く重要なスキルなんですよね。
そしてその、「気持ちはわかるでぇ」と「しかしこれは絶対やらなあかん(ピシャリ!)」との使い分けの高度なスキルは、次に述べる
「保守派の原則をリベラル的な文脈と繋ぐ高度な話法」
にも繋がってくるんですよね。
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3・「保守派の譲れない原則」をリベラルな文脈で説明するスキルが超スゴイ
3つ目はこれです。
C・揺るぎない”保守”の価値観を現代的にリベラルな文脈に読み替えて話すスキルが超凄い
自分が総務大臣だった時に、パスポートも運転免許証もマイナンバーカードも通称併記で出せるようにした。その他にも「通称使用において問題が起きるようなケース」を総務省として解決できる範囲のすべての法律を徹底的に洗い出して、1123件もの改正を行った。総理になったらそれをもっと徹底的に国レベルでやりたい
…という話をするのは凄いことだと思いました。
そうやって「保守派の原則」として譲れない部分を決して譲らないだろうという安心感を保守派に与えた上で、同時に「通称使用における現実的に不都合な点」があれば絶対にすぐ対処してくれそうだ…という安心感を困っている当事者に与える効果がある。
正直言ってこの「高市氏の考えるレベル」で現実上の不都合が徹底的に解決されるならば、そこから先あくまで「どうしても夫婦別姓でなくては」という課題を抽象度の高い原理主義的な課題として争点化し続ける層はかなり限られると思います。
…などと言うとすごく「言論を封殺」しているように聞こえるかもしれませんが、しかし台湾で一度は否決された同性婚が最終的に法制化された時にオードリー・タン氏周辺が「結婚不結姻」というコンセプトを発案し、「保守派にとって重要な中華文明圏における”家”概念を毀損しないような設計を作った」事が社会を分断しないで変化させる深い知恵となった例もあります。
その件についてはこの連載の以前のこの記事と、この記事が広く読まれた事で私のSNSアカウントに「一部の非妥協的な左派」からの攻撃的コメントが殺到したのに応えて書いたこの記事に詳しくまとめたので読んでほしいのですが、最初の記事に殺到した「一部の非妥協的な左派からの攻撃的コメント」を見ていると、
オードリー・タン氏周辺が深い魔術的配慮によって保守派を懐柔するために考え出された「結婚不結姻」というコンセプトは「同性婚賛成派の活動家」からは全然意識されていないらしく、ただ彼らは非妥協的に主張し続けた事で”保守派の分からず屋どもを打倒して”実現したのだと思っているらしい
事がわかって興味深かったです。
ある意味で日本でも、保守派として譲れない原則は決して揺らがせないという信頼感のもと、総務大臣時代に1123件もあった「現実的な通称使用の不都合」を一気に高市氏が解決したように、首相になったらもっとありとあらゆる分野で不都合な制度を徹底的に潰し終わりさえすれば、それでも”象徴”としての夫婦別姓にこだわり続けるのはよほど原理主義的な活動家だけになる可能性も高いと思います。
ここ10年〜20年の日本では、左右のイデオロギー対立的空論で時間が浪費されつつ、こういう「具体的な制度の細部」をちゃんと変えていくような仕事が軽視されすぎていたんじゃあないでしょうか?
たとえばこの記事など、最近色々な記事で述べていますが、米軍のアフガン撤退や米中冷戦の激化により、また「世界のGDPにおける欧米諸国のシェア」が下がり続ける現代においては、
「欧米文明的理想をあらゆる側面で原理主義的に現地の伝統に当てはめて糾弾する」ようなモードがある意味で一種のレイシズムと捉えられかねない空気が「欧米以外を含めた人類社会全体」で見れば徐々に高まってきて
おり、
欧米文明とローカルな現地社会の伝統を徹底的に「平等的」に見た上でその調和を図っていく態度がなくては、「欧米的理想」そのものが吹き飛んでしまいかねないことが、アフガンにおけるタリバンの暴走を見ていればわかるでしょう。
高市早苗氏の「保守派の原則を現代的リベラルの文脈で読み替えるスキル」は、そういった空気の上で
「その社会の保守派が譲れない伝統を破壊しない安心感を与えつつ、現実的な不具合を具体的に指摘されればサクサクと身軽に変えていける」
というような、上記で書いた「台湾の同性婚成立におけるオードリー・タン氏周辺の知恵」のようなものがあるといえるでしょう。
その「深い知恵」については、歴史認識問題や靖国参拝問題や対韓国関係についても発揮されているのですが、その点は説明が多く必要だと思うので、以下の別記事で扱います。この点も、「被害者」への配慮と「為政者として譲れない一線」のピシャリ感との両立がほんと凄いんですよ。その詳細について以下の記事↓をぜひどうぞお読みください。
アメリカのアフガン撤退以降の世界的情勢だからこそ可能な「歴史認識問題」のあるべき解決策を考える。
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4●「はたらく日本女性」のロールモデルとして
会見の中では、古い動画で高市氏が「生活保護者」に厳しいことを言っているような動画が拡散されていた事についても釈明しており、あれは「不正受給が問題とされている話題」だからああ言ったけれども、困窮者を助けたい気持ちは十分あるということで、「セーフティネットへのアクセスの仕方を公教育で教える」といった案についても語られています。(またそういう風に語る時に”困窮者への気持ちの寄り添い”感がちゃんと出せるのが本当に凄い表現力だと感じます)
問題の動画については、「自民党のコアな支持層」の内輪の会合で、「不正受給の問題」について語る時にはそういう語りが必要だったというだけの話で、もうひとつよく言われる「ネオナチ男性とツーショット写真」みたいな話にしてもそうなんですが、自民党議員やってれば初対面でそういう人と一緒に写真を取ることもあるでしょうし、「自民党内で階段をあがっていくにあたって必要だったアレコレ」について高市氏を個人的に攻撃するのは少しアンフェアかなという気がします。
唯一の課題は、福島原発事故の処理水の対処についてですが、これは福島の地方紙の質問への返答だったこともあり、また高市氏は説明すれば「素直に聞く」タイプだと言うことなので、そこが問題だとなれば考えを柔軟に変える部分もあると思います。
むしろ、ここまで書いた高市氏のコミュニケーションスキルによって、「原理主義的に自己目的化した糾弾者」と「現地のリアルな利害関係者」との間が分断され、「本当の納得」の上で進められるようになればそれが理想的なのは言うまでもないでしょう。
とにかく、総務省時代に「通称使用で問題がある法律を洗い出して所管範囲の1123件について全部一気に解決した」みたいなことを高市氏がやったのを今回の会見ではじめて知りましたが、その一点だけとってみても高市氏が「メチャクチャ有能」な判断力があるのがわかるはず。
最近私があちこちで書いている例なんですが、私(経営コンサルタント)のクライアント企業でこの10年で平均給与を150万円も引き上げられた改革の成功例があるんですが、この記事で書いたようにそうやってドラスティックな変革を本当にやりきろうとするなら、「保守側の重鎮」的なものへの敬意をしっかり示しながらやらないと、社会が二派に分断されてちょっとした変化でも大紛糾して身動きが取れなくなってしまうんですよね。
「欧米文明の延長」であるというブランドパワーに社会全体が守られているあのアメリカですら、社会の半分が完全に分離してしまって議事堂が占拠される事態になっているわけなんで、ましてや「社会の基礎」が欧米社会の「外側」にある日本社会においては、「古い社会の伝統」を思うさま神様目線で口汚くディスりまくることが本当に前向きな変化に繋がるのかどうか、我々はもう一度考え直すべき時ではないでしょうか。
口を開けば「日本の男どもがいかに抑圧的かトーク」で内輪でワイワイ盛り上がるグループと、「保守派を決して警戒させない態度」を示しつつあっという間に1123件もの「通称使用の不都合」について法律改正を成立させた高市氏と、「どちらが」日本における女性進出に貢献しているのか…は考えてみるべき問題だと思います。
日本における「活躍する女性のロールモデル」が、やたらキャッチフレーズ先行型で実務的素養が全然ないタイプだったり、「他責思考のモンスター」的にありとあらゆる課題が「古い日本の男社会のせいだ」と全力で吹き上がるのが仕事みたいな人だったりしたら、日本社会が『女性を活躍させる範囲』が非常に限られてしまいますよね。
逆に、高市氏のように「単純にメチャ有能」なタイプの女性が「日本の首相」になるということの「日本における女性の社会進出」に与える意味は非常に大きいと思います。
昨日までどうせ「極右的勢力の内輪だけのアイドル」だと思っていてほんとスイマセン。今、私は日本初の女性総理、「内閣総理大臣 高市早苗」を見たいと思っています!
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